ダービンワトソン比 †最小自乗法の仮定の一つに,「攪乱項u1, u2,..., uT はそれぞれ独立に分布する」というものがあった。ダービン・ワトソン比(DW) とは,誤差項の系列相関,すなわち,utとut-1 との間の相関の有無を検定するために考案された。
誤差系列に相関がある場合の問題点 †誤差項に1 階の自己相関がある場合(ut = ρut−1 +εt)の通常の最小2 乗推定(OLS)には以下のような問題点が生じる。
定義と判定 †ダービン・ワトソン比の定義は次の通りである。 また次式のように近似計算できる。
パラメータ ρ が 0<ρ<1 の範囲にあれば,ρハット もほぼ同じ範囲にあると考えられるので,DW はほぼ 0 と 2 の間で分布して,帰無仮説のもとでは大きく,対立仮説のもとでは小さくなる.すなわち,DW が2よりも十分に大きい時に、負の系列相関がある。逆に2より十分小さいときには正の系列相関の存在が示唆されることになる。 ダービンワトソン検定 †すなわち,ダービン・ワトソン比による検定とは,回帰式が yt = α + βxt + ut モデル式 ut = ρ ut-1 + εt 誤差の式 εtは互いに独立。E(εt・εt-i)=0 i=1,2,... のときに, H0 : ρ= 0, H1 : ρ> 0または ρ< 0 の検定である。
ダービンのh統計量による検定 †説明変数の中にラグ付き被説明変数(被説明変数を Yj としたとき Yj-1)が含まれないときはDW比を用い,含まれるときはダービンのh統計量を用いる. ダービンのh統計量は次式で定義される。 h = (1-0.5DW値){n/(1-nv)}^(1/2) ただし、VはYj-1 の係数の分散の推定量
ExcelでのDW比 †DW比を計算するためには残差を求めなければならない。 DW比を求めるために便利なExcel関数として,SUMSQ とSUMXMY2(XマイナスYの2乗和)とがある.SUMSQ 関数は,指定した範囲内のデータの2乗の和を計算し,SUMXMY2 関数は指定した2つの範囲の対応するデータの差の2乗の和を計算するものである.したがって,DW比の分子を計算するために SUMXMY2 関数を用い,分母を計算するために SUMSQ 関数を用いればよい.すなわち,適当なセルに =SUMXMY2(C28:C41,C27:C40)/SUMSQ(C27:C41) C28:C41<---utの推定値 C27:C40<---ut-1の推定値 SUMSQ(C27:C41)<---utの分散 という数式を入力すればよい 系列相関がある場合の推定方法 †これは、上記のモデルの場合の、観測データ{yt,xt},t=1~nからパラメータ(α,β,ρ)の求める方法について記す。一般には、時系列モデルの式は、いろいろな場合が考えられる。 回帰式が、次の場合を考える。 yt = α + βxt + ut モデル式 ut = ρ ut-1 + εt 誤差の式 εtは互いに独立。E(εt・εt-i)=0 i=1,2,... ui を消去する。 yt-ρyt-1=α(1-ρ)+β(Xt-ρxt-1)+εt であるので y#t=yt-ρyt-1 x#t=Xt-ρxt-1 と定義して、書き換えれば y#t=α# + βx#t +εt α#=α(1-ρ) となる。 このことから、次の収束計算で最小二乗法を使ってパラメータが求められることがわかる。
一般化最小二乗法 †上記のように、系列相関があるなどして通常の最小二乗法が適用できない場合、多段階で最小二乗法を適用することになるが、これを一般化最小二乗法(GLS:Generalized Least Squares)と呼ぶ。 この方法は、まずOLSを{yt,xt}に適用し、誤差系列を求め、再度誤差系列の最小二乗法から、未知パラメータを求め直すことになる。 ut = ρ ut-1 + εtの平均と分散 †上記モデルは、系列相関があり、通常の最小二乗法の最良推定量をえられる条件、utが独立で互いに無相関の条件を満たしていない。では、どのようなutかを説明する。 初期値uoの平均が0、uoとεtは互いに独立と仮定する。誤差項εtも平均0、E(εiεj)=σ^2δijとする。 u1=ρ u0 + ε1 u2=ρ u1 + ε1=ρ^2uo+ρε1+ε2 u3=ρ u3 + ε3=ρ^3uo+ρ^2ε1+ρε2+ε1 ・・・・ ut=ρ^t u0+ρ^(t-1)ε1+ρ^(t-2)ε2+...+εt となるので、この期待値と分散は E(ut)=0 V(ut)=σ^2/(1-ρ^2) COV(usut)=σ^2 ρ^(s-t)/(1-ρ^2) となる。
参考 † |