効用関数

効用関数は、起こりうる富の水準を表わす実数上で定義される連続関数である。 富の大きさを表わす2つのランダムな変数x,yを比較するには、E[U(x)]とE[U(y)]の大小を比較することで可能になる。

  • 効用関数は、個人のリスクに対する許容度や経済状態でかわるので、個人ごとに異なる。
  • 最も簡単な効用関数は、U(x)=xである。このような個人は、リスク中立的とよばれる。なぜならば、xのリスク(標準偏差)が大きくても全く配慮せずに、xの期待値のみで順序付けを行う。

良く使われる効用関数の形

  • 指数効用関数
    U(x)=-exp(-ax)
    • 負の値もとるが、相対的な大きさで順序づけるので問題はない。単調増大で零に近づく。
  • 対数効用関数
    U(x)=log(x)
  • ベキ乗効用関数
    U(x)=a+bx^γ
    • γ=1のとき、リスク中立的である。リスク回避の場合はγ<1.
  • 2次効用関数
    U(x)=x-ax^2

効用関数の特定:確実同値額を尋ねて内挿する方法

自分の効用関数を求めてみましょう。確実同値額を尋ねて内挿する方法で求めることができる。 ベキ乗効用関数 U(x)=a・x^γ+c の未知パラメータを求めるとしよう。

  • 問1.1万円もしくは9万円を受け取るくじを考える。2つの結果がそれぞれ1/2の確率で出現する時、その期待値は5万円である。その確実同値額は?--->これに4万円と答えたとしよう。
  • 問2.5万円もしくは9万円をそれぞれ1/2の確率で得られるくじを考える。その期待値は7万円である。その確実同値額は?---->これに6万円と答えたとしよう。
  • 問3.1万円もしくは5万円をそれぞれ1/2の確率で得られるくじを考える。その期待値は3万円である。その確実同値額は?---->これに2.5万円と答えたとしよう。

この結果は

U(4)=0.5U(1)+0.5U(9)
U(6)=0.5U(5)+0.5U(9)
U(2.5)=0.5U(1)+0.5U(5)

を意味する。

一般に効用関数は、U(1)=1、U(9)=9のように2点の値を定めて正規化できる。 この場合の条件は

U(1)=a+c=1
U(9)=a・9^γ+c=9

よって

a=8/(9^γ-1)
c=(9^γ-9)/(9^γ-1)

である。従って決めなければいけないのは、γだけである。 このγは、確実同値額の質問結果ひとつから求められる。今回は3つも式が得られる。3つの式の誤差をeiとすれば、次式が得られる。

4^γ=0.5・1^γ+0.5・9^γ+e1
6^γ=0.5・5^γ+0.5・9^γ+e2 
2.5^γ=0.5・1^γ+0.5・9^γ+e3

そこで、e1^2+e2^2+e3^2を最小にするように、ニュートン法などでγを求めればよい。

効用関数と平均-分散基準

マコービッツのモデルの平均・分散基準は2次効用関数を用いて収益率の確率変数が正規分布に従う場合の効用最大化基準と整合性がある。

  • 2次効用関数を仮定しよう。
    U(x)=ax-(1/2)bx^2
    この関数は、単調増大な範囲[0,a/b]でのみ意味をもつ。 ポートフォリオの富のレベルをyとし、これを期待効用基準で評価してみよう。
    E[U(y)]=E[ay-(1/2)by^2]
           =aE(y)-(1/2)bE[y^2]
           =aE(y)-(1/2)b{E(y)}^2-(1/2)b・σy^2
    最適なポートフォリオは、選択可能なyのうちで、上の期待効用を最大化するものである。 これは平均分散アプローチ等価であるか考えてみよう。

まず富の初期値を1としよう。このときyは収益率Rと等しくなる。いま期待値がE(y)=Mとなる解を考えよう。するとyは、E(y)=M=1+mをみたすすべてのyのなかで、分散が最小でなくてはならない。そして、y=Rなので解は平均分散効率的フロンティアの上になくてはならない。パラメータa、bを変えると異なる平均分散効率的な点が最適になる。


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Last-modified: 2010-06-25 (金) 15:20:36 (5053d)