最速降下曲線

変分法の夜明けとなった重要な曲線である。この解法がレオンハルト・オイラーによって改良され後に変分法と呼ばれるものになった。

変分法は、 A Brachistochrone curve (brachistos - the shortest, chronos - time), or curve of fastest descent, is the curve between two points that is covered in the least time by a body that starts at the first point with zero speed and is constrained to move along the curve to the second point, under the action of constant gravity and assuming no friction.

最速降下曲線はサイクロイド

最速降下曲線というのは,曲線に沿って物を転がしたときに,物が一番速く転がり落ちる曲線 ベルヌーイの提起した問題とは

『決まった二点の間を,始点から終点まで玉が一番速く転がることが出来るような曲線を求める』

というものです.

Given two points A and B, with A not lower than B, there is just one upside down cycloid that passes through A with infinite slope, passes also through B and does not have maximum points between A and B. This particular inverted cycloid is a brachistochrone curve. The curve does not depend on the body's mass or on the strength of the gravitational constant.

The problem can be solved with the tools from the calculus of variations.

Note that if the body is given an initial velocity at A, or if friction is taken into account, the curve that minimizes time will differ from the one described above.

質点の運動

質点が原点A から点B= (x0; y0) まで曲線(x; y(x)) に沿って降下すると,速さv は

undou1.JPG

で与えられる. 質量をm とすると位置エネルギーと運動エネルギーの和は一定なので,原点から初速0 で降下することにより,

1/2mv2 + mgy = 0

となり v =2gy^1/2 である。 原点から点Bまでの所要時間は

undou2.JPG

となる。

最速降下線の問題は次の汎関数を最少にする変分法の問題である。

undou3.JPG

解法

汎関数を使って最適化する。変分法の知識が必要です。

  • 解(軌跡)は平面内にあって鉛直方向を y軸,横方向を x軸 とすれば,2次元の曲線(関数): y=y(x) と表すことにします。
  • A からB までの降下時間は曲線の微小長さを ds ,物体の速度をv とすれば,定積分
    T[y(x)] = ∫a->b dT =∫a->b(1/v)ds
    で求められます。ここで,ds は,
    ds=SQRT((dx)2+(dy)2)   =  SQRT(1+(dy/dx)2)dx 
    および,v は重力加速度を g として,(エネルギー保存則から)
    mgy= mv^2/2  ⇒ v =  SQRT( 2gy )
    で与えられます。つまり,
    T [y(x)] =∫a->b(1/v)ds=∫0->b (2gy)^-1/2・(1+y'^2)^1/2 dx ただしy'=dy/dx
    結局,問題はこのT[y(x)]を最小にする関数 y(x)を境界条件:y(0)=0,f(b)=H で求めることに帰着されました

汎関数、最少作用の原理とオイラー・ラクランジェの方程式

  • ここで汎関数の極値問題を数学的に形式化
    汎関数の定義:
    S[y(t)]=  ∫a->b F [t,y(t),y'(t)]dt  Fはn 階連続微分可能な関数とする。
    ここで,汎関数 S[y(t)] のことを作用積分としばしば呼びます
    このような条件下で,この汎関数 S[y(t)] が最小値を取るようなのy(t)を求めることは,
    固定端変分問題:すべての y(t)∈K に対して,S[y(t)]≧S[y*(t)]なる y*(t) を求める。

ことです。

最小作用の原理:
力学系の運動は関数:F[t,y(t),y'(t)]によって特徴づけられ,実際に実現する運動の軌跡は
作用積分,S[y(t)]=  ∫a->b  F[t,y(t),y'(t)]dt を最少にするy*(t) である。

このような関数Fは,ラグランジェアンとよび Lで表わすことが多い。

  • 第一変分とオイラーの方程式 まず、関数のうちy(t,ε)=y*(t)+εη(t)なる関数を考える。真の曲線 y*(t)に対して,選ばれたη(t)のε倍の変化を与えた曲線群しか考察の対象にしないことを意味します。しかし,ηは任意の関数なので結局,A-B を通る任意の関数を最終的には考えていることになるのです。 任意のy(t)にたいして,S[y(t)]≧S[y*(t)] は   y(t,ε)=y*(t)+εη(t) を S [y(t,ε)] に代入すると,
    S [y(t,ε)]= ∫a->b F [t,y*(t)+εη(t),y*'(t)+εη'(t)] dt 
    S[y(t,ε)] をεの関数と見なし φ(ε)≡S [y(t,ε)]とおくと,任意のε∈R に対して,( φ(0)=S [y(t,0)]=S[y*(t)] なので,)  φ(ε)≧φ(0), に帰着する。 この必要条件は,
    1階条件より
    φ'(0)=S' [y(t,0)]=0 ただし,y(t,ε) =y*(t)+εη(t),および,  φ'(0)=[dφ/dε]ε=0
φ'(ε)=∫ (∂F/∂y・∂y/∂ε+∂F/∂y'・∂y'/∂ε)dt 

y(t,ε)=y*(t)+εη(t), y'(t,ε)=y*'(t)+εη'(t)より

φ'(ε)=∫ (∂F/∂y・η(t) +∂F/∂y'・εη'(t))dt =∫ (Fy・η +F/y'・η')dt 

この条件式を第一変分といいます 汎関数に極値を与える y*(t) は方程式

∫ (Fy・η +F/y'・η')dt = 0 

を満たすことがわかる。 さらに第2項の部分積分(t の関数として)を実行すると

∫a->b Fy'η'dt=[Fy'η] + ∫ dFy'/dt・ηdt 

上の第1項はη(a)=η(b)=0 なので0 です。 結局,φ'(0)=0 の条件は

∫{Fy- dFy'/dt]・ηdt 

となる。上の式で、η(t)が任意に変化しても成立するためには

Fy- dFy'/dt =0 ・・・・・・・オイラー方程式

解析力学でなじみのあるラグランジェアンLを用いて書けば

∂L/∂q-d(∂L/∂q')/dt=0  ・・・・・・ラグランジェの方程式

を得ることができた。 y(t)=y*(t)が汎関数を最少化するための必要条件は、y*(t)がオイラーの方程式を満たすことである

オイラー方程式から解を求める

F=f(t,y,y')=(1+y'^2)^1/2・(2gy)^-1/2 を使って∂F/∂y'と∂F/∂yを計算する。

∂F/∂y'= y'・(2gy)^-1/2・(1+y'^2)^-1/2
∂F/∂y= -1/2・(1+y'^2)^1/2・(2g)^-1/2・y^-3/2

オイラーの方程式 Fy- dFy'/dt =0 を整理して、微分方程式を得る。

y(1 + y'^2) = C1 で

y = k1+k2cosθ とおいてこれに代入して解く

y = C1/2・(1 − cos θ)
x = C1/2・(θ − sin θ)

となり、サイクロイド曲線である。

変分法の例題:垂らした紐の形

線密度ρ、長さl のひもの両端を固定して垂らしたときのひもの形を求めます。 ひもは、位置エネルギーが最小になるような形をとります。ひもの微小部分の質量は

ρ(1 + y'^2)^1/2

なので

制約:∫(1 + y'^2)^1/2 dx=Length のもとで
∫gρy(1 + y'^2)^1/2 dx の極値を求めることになります。ただしgは重力係数

こたえは、懸垂線 懸垂線y +λ = C1 cosh[(x − C2)/C1 ]

歴史的記述

  • ガリレオは1638年に著書"Two New Sciences"で、最速降下曲線は円の弧であるとしたが誤りであった。ヨハン・ベルヌーイは(以前に解析した等時曲線を参照して)この問題を解いた後、1696年6月に著書"Acta Eruditorum"で読者に対して問題を提示した。
  • 1696年にスイスの数学者ヨハン・ベルヌーイ(1667-1748)によって提起された 公開後しばらくして,ライプニッツの提案により,ベルヌーイはこの問題を海外の数学者にも公開することにしました.もちろんニュートンの鼻を明かしてやるつもりだったのです.ところがこの問題を受け取ったニュートンは大変疲れていたにも関わらず一晩で解いてしまったそうで,ベルヌーイとライプニッツは大変に悔しがりました. ベルヌーイの設定した期限内に回答を寄せてきたのは,ライプニッツ,兄のヤコブ・ベルヌーイ,ニュートン,ロピタルの4人だけでした.1697年に解答が発表されたとき,なぜかロピタルだけは無視され,他の4人の解答が発表されました.ロピタルの証明は1988年になってようやく発見され,正しいことが確認されました.
  • 弟に対抗してヤコブ・ベルヌーイはより難しい最速降下曲線問題を作った。それを解いている間に新しい手法を開発し、それがレオンハルト・オイラーによって改良され後に変分法と呼ばれるものになった。ジョゼフ=ルイ・ラグランジュは現代の微積分学に帰着するさらなる仕事を進めた。

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Last-modified: 2009-09-24 (木) 21:00:56 (5338d)