平均-分散選好と最適ポートフォリオ †期待効用が、富Cの平均収益率 E(c)とその分散 E[(C-E(c))^2]で表わされる場合の最適ポートフォリオを計算しよう。 平均は、リターンであり、分散はリスクを表わすので、このような選好を平均ー分散選好と呼ぶ。 さて、現在に、安全資産x0とn個の危険資産xi,i=1~nがあるとしよう。各資産の保有割合を表わすベクトルをポートフォリオと呼び (x0,x1,x2,・・xn) x0+x1+・・+xn=1 で表わす。 将来の富cは、現在の富c0に、各資産の収益率riを使って、下記のように表わされる。 C=(1+R)C0 (1) R=Σ(1+ri)xi i=0,n (2) Σxi=1 (3) 最適ポートフォリオとは、期待効用E[U(c)]を最大とするような、ポートフォリオを決定する問題である。 不確実性は、各資産の収益率にあると考えてこれを確率変数とする。安全資産x0の収益率r0は定数であり、n個の危険資産の収益率ベクトルr=(r1,r2,・・・,rn)は、平均ベクトルをμ、共分散行列Σ={σij}で表わされるとする。 この時、総合収益率Rの平均 μ と分散 V=σ^2 は、定義から次式で表わすことができる。
将来の富Cは、現在の富c0の1+R倍であるので、U(C)をRで読み替えてU(R)とする。 効用関数U(R)は、確率変数Rの関数である。すなわち、収益率Rの平均と分散で表わされる。
最適ポートフォリオ †最適ポートフォリオは、(1)から(5)の条件の下で、効用関数U(μ,σ^2)を最大にするポートフォリオXを求めることである。 この解は、ラグランジェ関数L を次のように置き、これをxi、i=1~nで偏微分して、n個の連立方程式を解くことで求められる。 L=U(μ,V)+λ・(1-Σxi) 一般解は
この式は、次のことを意味する。
効用関数 †次の指数型の効用関数を考え、最適なポートフォリオを求めてみよう。 U(R)=-exp(-αR) α>0 このタイプの効用関数では、Rが正規分布N[μ,σ^2]に従う時、期待効用は次式で表わされる。 E[U(R)]=-exp[-αμ+(1/2)α^2σ^2] 上記の期待効用が一定となる等効用曲線、すなわち(μ,σ)の平面上で、効用の等しい集合は、E[U(R)]=定数なので、次の2次曲線で与えられる。 μ=(1/2)σ^2+K K:定数 この効用関数の場合の最適ポートフォリオは
計算例:1971-1989年 †危険資産として、株式と土地、安全資産として預金を考える。1971-1989年の平均収益率を計算すると、長期プライムレート、株価、土地価格の上昇率を採用すると 預金 :r0=0.075 株価 :r1=0.167 地価 :r2=0.121 であった。 共分散行列は σ11=0.025、σ12=σ21=0.005 であった。 この時、上記の最適ポートフォリオを計算してみよう。但し、α=1の主体の場合としよう。
答えは、 x0=-3.43 x1=3.42 x2=1.03 である。 すなわち、α=1の主体の場合は、銀行借り入れを行い、株式と土地に3.4対1の割合で投資するのが良かったことになる。 ただし、リスク回避的な個人の場合、αが4.45より大きい場合は、借入を行わずに、株式と土地に3.4対1の割合で投資するのが良かったことになる。 分離定理 †上記の例でもわかるように、危険資産の保有割合は、危険資産のみでの最適点Mできまり、危険資産と安全資産の保有割合は、評価主体のリスク回避度で決まる。
参考 † |