期待効用 †ノイマンとモルゲンシュテルンは、1944年に、意思決定者が合理性であれば、効用関数が存在するという「期待効用」の存在の証明を行った。
期待効用仮説 †ノイマンとモルゲンシュテルンは、人は期待効用を最大化するように合理的に意思決定を行うとの仮説を提示し、期待効用(基数的効用関数)の存在を証明した。 くじ:lotteries †排他的な2つの結果が得られる事象を(A,B)考える。Aは確率Paで生起し、Bは確率Pbで生起すると仮定する。 結果Aの効用、Ua=U(A)で表わし、結果の上で定義された実数値関数である。また、確率Paは、結果の得られる事象の生起確率(所与)である。 ここで、AをA円を得る結果、BをB円を得る結果と定義すれば このとき、くじの結果Lは、次式であらわされる。 L=Pa・A+Pb・B ここで、もうひとつのくじMを考える。 M=Pc・C+Pd・D 決定者は、どちらのくじを選ぶか合理的に決定するとしよう。
このような、等価な関係を確実性等価と呼ぶ。確実性等価とは、不確実な見込みの期待効用と同等の効用をもたらす確実な見込みの経済価値のことである。 このように、人は不確実性を嫌うので、数学的には、前のくじにたいして期待額=1万円よりも低い評価をすることが多い。 期待効用とは †効用関数がu=U(M)で与えられているとすると、確実なくじのこの個人の効用は、u=U(y)である。もし不確実な状況を選んだ場合、ここで用いられるのがフォン=ノイマン・モルゲンシュテルン効用関数である。 前例のケースでは、二つの収入状況が起きる確率はともに0.5なので、確率×それぞれの収入額を効用関数に代入したものの和であるところの Eu=0.5×U(2万円)+0.5×U(0万円) が、期待効用である。 一方、確実なくじの効用は、U(0.9万円)である。 前例の等価関係を数式表示すれば U(0.9万円)=Eu=0.5×U(2万円)+0.5×U(0万円) となる。 そして、確実性等価額0.9万円と数学的期待値1万円の差を「リスクプレミアム」とよぶ。 不確実性のリスクがあるが故に、減価された金額である。別の見方をすれば、リスクを回避するが故に発生するところの追加的な費用である。 現実に、信用度の低い企業の債券利回りは大きくないと売れない’(価格が安くないと売れない)などの現象は、この効用関数とリスクプレミアムで説明できる。 このような、効用関数は、存在するのであろうか。一定の条件の下で、このような効用関数が存在することを示したものが、フォン=ノイマン・モルゲンシュテルンの期待効用定理である。 期待効用定理 †L 上の選好が、完備・推移・連続・独立の各性質を満たすとする。このとき、N 個の数u1, u2, · · · , uN が存在して、任意の二つのくじL =(p1, p2, · · · , pN) とL’ = (p’1, p’2, · · · , p’N) について、 L prefere to L ⇐⇒Σui・pi ≥ Σui・p'i
アレのパラドックス †アレの発言で最も有名なのは、1953年にニューヨークで行われた会議における「アレのパラドクス」である。これは、ジョン・フォン・ノイマンが育てた「望ましい効用」という常識を基礎にしている。 この会議のとき、アレは、連続する2回のくじに関する質問を、たくさんの参加者に問いかけた。
1回目の選択では、u(10)>0.1u(25)+0.89u(10)+0.01u(0)より 下記の式が成立 0.11u(10)>0.1u(25) 2回目の選択では、0.11u(10)+0.89u(0)<0.1u(25)+0.9u(0)より 下記の式が成立 0.11u(10)<0.1u(25) この2つの選択は、矛盾する。1回目は、目先のリスクを回避して確実な10万円を選択、2回目は、賞金なしのリスクを回避して少ない確率の利得であるがより大きい利得を優先している。 1回目のくじにおいては、個人は期待利得の低い方を選択し、2回目のくじにおいては、期待利得が大きい方を選択したのだ。この実験は何度も繰り返されたが、全て同じ結果になった。
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