消費CAPM †消費に基づく資本資産価格モデル(C-CAPM)を紹介する。家計の動学的行動から得られた最適化条件に基づき資産収益率 の変動を分析しようとするものである。 動学的モデルにおいて、毎期の消費 Ctは、資産の実質収益率、消費の価値の割引率、家計のリスク回避性向によって決まってくる。 C-CAPMでは「市場で与えられる実質資産収益率と、家計が今期の消費と来期の消費を交換すること に対する主観的評価が均衡においては一致する」という家計消費を最適化するための条件を用いて、家計の効用関数の形状を推計することが中心的な分析手法となっている。
株式市場のマーケット・ポートフォリオは投資家が直面する全ての「資産」,特に人的資本(労働所得)を含んでおらず,したがって投資家にとっての真のマーケット・ポートフォリオに対応して いないという批判があった 消費CAPMと呼ばれるモデルのイノベーションは,人的資本を含む資産市場が完備であるという前提のもとで,マーケット・ポートフォリオの代わりに消費を用いて実証を行うことで,上記の問題を回避することが出来ることを示した点にある.消費CAPM モデルが成立するためには,労働所得が金融資産と同じ様に価格付けできることが前提となる. C-CAPMの定式化 †家計は、期待効用の割引現在価値が最大となるように消費と総資産保有の流列{ ct , At }を選択しているとする。 すなわち 家計の期待効用=E0{ Σ β^t u(ct)} t=0,1,2,....,∞ At+1 = (1+ rt)At+ yt - ct 資産推移式 E0:期待値 t=0,1,2,....,∞での期待値 βは主観的割引率( r を時間選好率とすると、β=1/(1+r) 、0<β<1となる) ct =実質消費 yt =労働所得 At =総資産 rt =実質資産収益率 いま、効用関数は相対的危険回避度(γ)一定の次の式であると仮定する。 u(ct) =[ct^(1-γ) -1]/(1- γ) 上記の資産推移式の下で、期待効用を最大化する消費ctと資産Atを求めよう。 ラグランジェ乗数λt を用いて以下のラグランジェ関数を設定する。 J =E0 {Σ β^t {u(ct)+λt[(1+ rt)At+ yt - ct-At+1)]}} t=0,1,2,....,∞ 最適解は、次式のオイラー方程式を満たす。 上式を ct とAt について微分し、最大化のための1階の条件を求めると、 u '(Ct)- λt=0 -λt + βEt{λt+1(1+ rt+1)} 連立式のλtを消去して整理すると u '(Ct)= βEt{u '(Ct+1)(1+ rt+1)} t=t,t+1,....,∞ である。 左辺はt期の消費における限界効用である。一方右辺はt+1 期の消費における限界効用で あるので、最適条件ではこれらが一致することになる。 または 1=Et{β[u '(Ct+1)/u '(Ct)](1+ rt+1)} t=t,t+1,....,∞ である。これが、最適解である。 この式に効用関数を微分して代入すれば相対的危険回避度(γ)一定の解が求められる。 1=Et{β(Ct+1/Ct)^(-γ)(1+rt+1)} t=t,t+1,....,∞ この式は経済がパレート最適であるとき、生産技術のいかんにかかわらず実質資産収益率rt と実質消費伸び率Ct+1 / Ct について成立する。 実証からの知見 †消費CAPM は,1980 年代以降,様々な研究者によって実証的に検討されてきた.
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