線形差分方程式とは †線形の漸化式で表わされる方程式である。 xt=a1xt-1+a2xt-2+....+anxt-n 初期値を与えれば、数列がその解として求められる。 Xt+2=3xt+1-2xt の場合、x1=1,x2=0からスタートすれば {1,0,-2,-6,-14,-30,....} の数列は、上の差分方程式から得られる。また、初期値を変えれば、下記の数列も得られる。 {1,1,1,1,1,....} {2,4,8,16,32,....} この数列のn番目の値xnを表わす式を求めることを、一般解を求めるという。
解の系列の特徴と一般解 †上記の差分方程式の次の3つの解の数列x1、x2、x3はどのような性質をもつのであろうか?。 X1={1,1,1,1,1,....} X2={2,4,8,16,32,....} X3={1,0,-2,-6,-14,-30,....} 最初の解の数列はt番目の項が1^t=1となっており、2番目の解の数列はt番目の項が2^tとなっている。 さらに、3番目の数列は、前の2つの数列の線形和の形になっている。 X3=2・x1+(-1/2)x2={1,0,-2,-6.-14,-30,....} このように、上記の差分方程式の解は、一般に X=c1X1+c2X2=c11^t+c22^t C1,c2は初期値によって異なる。 で表わされそうである。これが、差分方程式の解が線形部分空間の要素であるとの意味である。 それでは、このことを一般的に成立するか調べてみよう。 シフトオペレーター:シフト作用素 †複素数の無限数列の集合をVとして、その要素のX={x1,x2,x3,...}に対して、シフト作用素E とは EX={x2,x3,....} を与える作用素である。この作用素は、VからVへの写像を与える作用素である。 i回繰り返してシフトする作用素を E^i (iは整数)で表わす。E^0は、元の数列をそのまま与える。 この作用素の線形結合で表わされる下記の作用素Lを、線形差分作用素L(E)と呼ぶ。 何故、線形作用素と呼ぶかといえば、前記の和とスカラー積の2つを定義することで、線形空間から線形空間への写像を行う作用を果たすからである。 L(E)=c0E^0+c1E^1+ ....+E^m これは、m次差分方程式の作用素である。L(E) 線形差分方程式で表わされる数列Xは、作用素表示すれば、 L(E)x=0 <--->c0E^0x+c1E^1x+ ....+E^mx=0 で表わされる。 また、λの多項式 P(λ) P(λ)=c0λ+c1λ^1+ ....+λ^m のλに作用素Eを代入した形になっている。
特性多項式=0の解の性質 †定理;特性多項式p(λ)=0の解をλ*とするとき、数列X*={λ*,λ*^2,λ*^3,....}は、線形差分作用素で表わされるp(E)X=0 の解である。p の解が0 でなく重解を持たないならば, 差分方程式p(E)X = 0 の解は特性多項式の解の一次結合であらわされる.
多項式が重根を持つ時の一般解 †定理:特性多項式がP(λ)=0が重根λを持ち、重複度がkとする。また、P(0)=でないとする。この時、P(E)の基底は、x(λ)、x'(λ)、x''(λ)、...X^(k)(λ) である。そこで、一般解は λ^t、tλ^(t-1)、t(t-1)λ^(t-2)、....などk個の項の線形結合で表わされる。 下記の数列はp(E)X=0を満たす。 x(λ)={λ,λ^2,λ^3,....} x'(λ)={1,2λ,3λ^2,4λ^3....} X''(λ)={0,2,6λ,12^2,...}
差分方程式の初期値と一般解 †差分方程式の一般解は、初期値を与えれば、特性多項式の解の線形和の係数を特定できるので、ユニークに与えることができる。 2次の差分方程式の一般解 †2階の線形差分方程式 xn+2-axn+1-bxn=0は特性方程式の2解をαとβとおくと、
安定な差分方程式とは †差分方程式p(E)x = 0 が安定(stable) であるとは, すべての解が有界であ ること.
差分方程式の行列・ベクトル表現:状態空間モデル †最初に出た差分方程式を行列表示してみましょう。 yt+2=3yt+1-2yt 初期値:y1=1,y2=0 は、下記のように表わされる。 |Xt+2|=|3 -2| |xt+1| |Xt+1| |1 0| |xt| そこで、A行列を A=|3 -2| |1 0| として、Z=(z1,z2)'ベクトルとおいて Zt+1=A zt yt==|1 0| zt 初期値:Z1=(0,1)' で表わされる。これを状態空間モデルという。 固有値・固有ベクトルと特性多項式 †マトリックスAの固有値λと対応する固有ベクトルZは AZ=λZ <-->(A-λE)Z=0 0:零ベクトル で定義される。これは同次の連立1次方程式と考えられる。ここで固有ベクトル が存在するための必要十分条件は,右式の行列式の右からX'を掛けて、行列式の値 det|A-λE|det|xx'|=0より det|A-λE|=0 である。これを固有多項式と呼ぶ。 この場合は det|A-λE|=(3-λ)(-λ)-(-2)(1)=λ^2-3λ+2=0 である。この根である固有値は+1と+2であることが判る。
固有値+1の固有ベクトルは A-λE=A-E=|2 -2| |1 -1| より、(A-λE)Z=0 を満たす固有ベクトルとして(1,1)'が求められる。 固有値+2の固有ベクトルは A-λE=A-2E=|1 -2| |1 -2| より、(A-λE)Z=0 を満たす固有ベクトルとして(1,1/2)'が求められる これら固有ベクトルを列にもつ次の行列を定義する。 T=|1 1| |1 1/2| 対角化による一般解の求め方 †固有値が異なっている場合はTが正則となるのでTの逆行列が存在し対角化可能である。
固有値が異なっている場合、これを用いれば、AT=ΛT(Λは固有値を対角要素にもつ行列)なのでT^(-1)AT=Λ のように対角化できる。Tの逆行列T^(-1)をT~で簡略表現すれば (T~AT)(T~AT)....(T~AT) = T~(A^n)T =Λ^n であるので A^n=T(Λ^n)T~ のように、A^nもTを使って計算できる。この式からyt+1の一般解は、 yt+1=(1,0)A^(t)z1=(1,0)T(Λ^t)T~z1 となるので、 固有値λ1とλ2を使って yt+1=c1(λ1)^n + c2(λ2)^n c1,c2は定数 のように表わされることになる。 c1,c2は初期条件y1=1,y2=0を与えてれば求めることができる。 線形漸化式のn期の一般解xt+1=A^(t)x1は、λ1=1のn乗とλ2=2のn乗の線形和で得られ、初期条件を与えることで線形和の係数をユニークに決められるることも理解できる。
固有方程式が重解をもつ場合 †実は、固有方程式がm重解をもつ場合であっても、固有値に対応する固有ベクトルがm個ある場合には、行列Aを対角化することができます。固有方程式がm重解をもつ場合、固有値に対応する固有ベクトルがm個未満の場合には、行列Aを対角化することはできず、類似の操作を行うと、Jordanの標準形と呼ばれる形になります。
重ね合わせの原理 †入力utを持つ線形差分方程式を考えてみよう。 xt=a1xt-1+a2xt-2+....+anxt-n +ut 入力系列の数列をu={u1,u2,...}とすれば、解の数列xは、線形差分作用素L(E)を用いて L(E)x=u で表わされる。 このことから、
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