#freeze
*ランダムウォークとは [#va72bc6f]
ランダムウォーク(random walk)は、次に現れる位置が確率的に無作為(ランダム)に決定される運動である。乱歩(らんぽ)、酔歩(すいほ)の位置の軌跡を表わす。

ウィーナー過程はブラウン運動の数理モデルであると考えられ、しばしばウィーナー過程自身をブラウン運動と呼ぶ。
-ウィーナー過程はホワイト・ノイズの積分を表すものとして用いられ、それゆえに電子工学におけるノイズ、フィルタリング理論における機器誤差、制御理論などの数理モデルとして有用である。
*数学的定義 [#t606cdc4]
Xn (n = 1, 2, ...) を独立かつ同分布な実数値を値にもつ確率変数とする。
このとき,Xn+1=X0+x1+x2+....+xn の確率変数を考える。このXnを、ランダムウォークと呼ぶ。
独立かつ同分布であるので,Xn+1の確率分布は
 p(x0)P(x1)....P(xn)
であらわされる。
-コインを投げて「裏と表が出る確率」は、共に二分の一である。コインを投げて表が出た場合に点を右(正の方向)に+1進め、裏が出た場合に点を左(負の方向)に-1進める試行は、1次元のランダムウォークである。これを無限回繰り返した場合に、点がある位置xに存在する確率は正規分布で示される。これは、中心極限定理による。
 P(xi=+1)=1/2
 P(xi=-1)=1/2
であるので P(xi)=(1/2)^[(xi+1)/2](1/2)^[(1-xi)/2]で確率が表わせる。
この時、n回目の位置xnの、確率密度関数は次式であらわせる。
 P(xn)=p(x0)P(x1)....P(xn)
      =(1/2)^[Σ(xi+1)/2](1/2)^[Σ(1-xi)/2]
-Xiが、正規分布の場合も、仮定より、Xn+1=X0+x1+x2+....+xnがまた正規分布となり、同様の議論が成り立つ。

ウィーナー過程 Wt は次の三つの条件
 1.W0 = 0
 2.Wt はほとんど確実に(確率 1 で)連続である。
 3.Wt は独立増分を持ち、0 ≤ s < t なる任意の s, t に対して、Wt − Ws は正規分布 N(0, t − s) に従う。Wt=Wt-W0=BtでBtはN(0,t)に従う。
-以下のように定義される確率過程
 Xt = μt + σWt
はドリフト項 μ と無限小分散 σ2 を持つウィーナー過程と呼ばれる。

*資産の収益率のブラウン運動 [#l1a9c2a5]
幾何ブラウン運動 (geometric (fractional) Brownian motion (GBM)) は、対数変動が平均μ分散σのブラウン運動にしたがう連続時間の 確率過程で、金融市場に関するモデルや、金融工学におけるオプション価格のモデルでよく利用されている。
-GBMの増分が 資産価格 St に対する比として表されることから幾何(geometric)の名称がつけられている。
 dSt=μSt dt + σSt dBt
 dStは 増分。 例:金融商品の価格の増分。
 dBtはブラウン運動の増分。Btは平均 0 分散 1 のガウス分布
 μは(現在の St に対する割合であらわした)平均。原資産価格 St の期待収益率(定数)。
 σは(現在の St に対する割合であらわした)ボラティリティ。
両辺を、Stで割れば、上記の確率微分方程式は次のように書き換えできることに注意
 d(logSt)=μdt + σ dBt
初期値を S0 とすると、解は次のように表せる
 St=S0EXP{(μ-σ^2/2)t+σ Bt}
-性質
--幾何ブラウン運動の確率変数 log(St/S0) は、平均(μ-σ2/2)t 分散 σ2t の対数正規分布にしたがい、その平均と分散は以下のように表せる。
 平均:E(St)=EXP(μt)So
 分散:Var(St)=EXP(2μt)So^2{exp[σ^(2t)]-1}
--ブラック・ショールズ方程式などのモデルでは、上のように原資産価格はボラティリティ σ を定数とする幾何ブラウン運動に従うと仮定している
--ブラック-ショールズモデルとは、1種類の配当のない株と1種類の債券の2つが存在する証券市場のモデルで、時刻 t における株価 St と債券価格 Bt が
 dlogSt = σdWt + μdt
 Bt = exp(rt)
 μ は原資産価格 St の期待収益率(定数)
 σ はボラティリティで定数
 dWt は平均 0 分散 1 のガウス分布
--ここに、Wt は標準ウィーナー過程 、r, σ, μ は定数で、r は無リスク利子率、σ をボラティリティ、μ をドリフトという。 ボラティリティは株価の変動の激しさを表し、ドリフトは株価の平均増加率を表すと解釈できる。
--株式の保有量と同債券の保有量を決めて(株式と債券の取引戦略)、将来のある時点で株式を売る権利の価格(または買う権利)を決めることができる。この価格公式をブラックショールズのオプション価格公式という。
*参考 [#h9979c22]
-[[A Closed-Form Solution for Options with Stochastic Volatility.PDF>http://www.javaquant.net/papers/Heston-original.pdf]]
-[[ギルサノフの定理の数理統計学的理解と証明>http://www.qmss.jp/prob/stochasticproc/35-girsanov.pdf]]
-[[伊藤過程と伊藤の公式>http://takashiyoshino.random-walk.org/memo/keikaku_ensyu/node5.html]]

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