#freeze
*平均-分散選好と最適ポートフォリオ [#ga6a47b2]
期待効用が、富Cの平均収益率 E(c)とその分散 E[(C-E(c))^2]で表わされる場合の最適ポートフォリオを計算しよう。

平均は、リターンであり、分散はリスクを表わすので、このような選好を平均ー分散選好と呼ぶ。

さて、現在に、安全資産x0とn個の危険資産xi,i=1~nがあるとしよう。各資産の保有割合を表わすベクトルをポートフォリオと呼び (x0,x1,x2,・・xn) x0+x1+・・+xn=1 で表わす。

将来の富cは、現在の富c0に、各資産の収益率riを使って、下記のように表わされる。

 C=(1+R)C0        (1)
 R=Σ(1+ri)xi i=0,n    (2)
 Σxi=1                  (3)

最適ポートフォリオとは、期待効用E[U(c)]を最大とするような、ポートフォリオを決定する問題である。

不確実性は、各資産の収益率にあると考えてこれを確率変数とする。安全資産x0の収益率r0は定数であり、n個の危険資産の収益率ベクトル''r''=(r1,r2,・・・,rn)は、平均ベクトルを''μ''、共分散行列''Σ''={σij}で表わされるとする。

この時、総合収益率Rの平均 μ と分散 V=σ^2 は、定義から次式で表わすことができる。
 
-μ=E(R)=Σμixi            (4)
-V=σ^2=E[(Σ(1+ri)xi-Σμixi)^2]=''x''t''Σ''''x''=Σxixjσij  (5)

将来の富Cは、現在の富c0の1+R倍であるので、U(C)をRで読み替えてU(R)とする。
効用関数U(R)は、確率変数Rの関数である。すなわち、収益率Rの平均と分散で表わされる。

-U(R)=U(μ,V)      (6)

*最適ポートフォリオ [#tb978a79]
最適ポートフォリオは、(1)から(5)の条件の下で、効用関数U(μ,σ^2)を最大にするポートフォリオ''X''を求めることである。

この解は、ラグランジェ関数L を次のように置き、これをxi、i=1~nで偏微分して、n個の連立方程式を解くことで求められる。

 L=U(μ,V)+λ・(1-Σxi)

一般解は
-''X''=-(1/2){(∂U/∂μ)/∂(U/∂V)}''Σ''^(-1)(''μ''-''r0'')
-x0=1-Σxi i=1~n
である。但し、''μ''は、平均ベクトルで、''r0''は安全資産の収益率を各要素にもつベクトル。

この式は、次のことを意味する。
--収益率の高い資産ほど、保有割合が多い
--リスク(分散)が大きい資産ほど、保有割合が少ない。
--危険回避度の高い主体ほど、危険資産のシェアが少ない。

*効用関数 [#i7c526c4]
次の指数型の効用関数を考え、最適なポートフォリオを求めてみよう。

 U(R)=-exp(-αR) α>0
このタイプの効用関数では、Rが正規分布N[μ,σ^2]に従う時、期待効用は次式で表わされる。
 E[U(R)]=-exp[-αμ+(1/2)α^2σ^2]
上記の期待効用が一定となる等効用曲線、すなわち(μ,σ)の平面上で、効用の等しい集合は、E[U(R)]=定数なので、次の2次曲線で与えられる。
 μ=(1/2)σ^2+K K:定数
この効用関数の場合の最適ポートフォリオは
-''X''=(1/α)''Σ''^(-1)(''μ''-''r0'')
-x0=1-Σxi i=1~n
*計算例:1971-1989年 [#sc5f63bc]
危険資産として、株式と土地、安全資産として預金を考える。1971-1989年の平均収益率を計算すると、長期プライムレート、株価、土地価格の上昇率を採用すると
 預金 :r0=0.075
 株価 :r1=0.167
 地価 :r2=0.121
であった。
共分散行列は
 σ11=0.025、σ12=σ21=0.005
であった。

この時、上記の最適ポートフォリオを計算してみよう。但し、α=1の主体の場合としよう。
-''X''=(1/α)''Σ''^(-1)(''μ''-''r0'')
より、共分散行列の逆行列を、''μ''-''r0''=(0.092,0.041)ベクトルに掛ければ良い。

答えは、
 x0=-3.43
 x1=3.42
 x2=1.03
である。
すなわち、α=1の主体の場合は、銀行借り入れを行い、株式と土地に3.4対1の割合で投資するのが良かったことになる。

ただし、リスク回避的な個人の場合、αが4.45より大きい場合は、借入を行わずに、株式と土地に3.4対1の割合で投資するのが良かったことになる。

*分離定理 [#i3166e04]
上記の例でもわかるように、危険資産の保有割合は、危険資産のみでの最適点Mできまり、危険資産と安全資産の保有割合は、評価主体のリスク回避度で決まる。

-''危険資産内での最適なポートフォリオの決定(M点)と、安全資産と危険資産の決定(N点)の決め方は分離してよいので、これをTobinの分離定理と呼ぶ。''
#ref(portforio-sumary.JPG)
*参考 [#ze8a5b1b]
-[[J.Tobin,Liquidity Preference as behavour Towards Risk,1958>http://cowles.econ.yale.edu/P/cp/p01a/p0118.pdf]]
-[[Mean-Variance Portfolio Choice>http://www.be.wvu.edu/divecon/econ/balvers/2.pdf]]

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