#freeze
*バスモデル:Bass model [#g16e15b4]
新製品普及の代表的モデルであり、ロジスティックモデルを包含するモデルになっている。
-Bass モデルは1969 年にBassによって発表された。
-改良Bass モデルも現れ、耐久消費財だけではなく、農業、教育、医薬品、などの市場分析に活用されてきた。

*バスモデルの表現 [#web6898c]
Bass(1969)は新製品の潜在的採用者は、自らの意志のみで購入を決定する革新者(「イノベーター」)と、普及のようすを見ながら購入を決定する模倣者(「イミテーター」)の2種から構成されると考えた。前者はマスメディア等による情報伝達(「外的影響」)によって、後者は既採用者の口コミによる情報伝達)によってその購入行動に影響を受ける購入層であると説明されている。
 n(t) = rp (m- N(t -1)) + rf{N(t -1)/m}(m- N(t -1))
 N(t) = N (t -1) + n(t)  
 m を潜在市場規模(潜在的な最終購入者数で、飽和普及水準量を示す)。
 n(t) をt 期の購入者数、
 N(t -1) をt-1 期までの累積購入者数(t-1 期までに既に購入した人の合計)とする
--パラメータ rf は既存の購入者の影響「追随的影響」を示す。パラメータrpは「先導的影響」を示す。Bass(1969)は、rpをCoefficient of Innovation、rf をCoefficient of Imitationと呼んだ。
-第1項は、t 期の購入者のうち、前期までの「先導購入者」の数をあらわしている.第2項は、前期までの「追随購入者」の数をあらわしている。

*パラメーター推定方法 [#e7e4d6c0]
3 つのパラメーター、すなわち 1)潜在市場􀖩模のパラメーターm、2)革新的な人の年間購入率を表わすパラメータrp、3)追随者のパラメータrf を推定する必要がある。

まず、パラメータに関して次のようにに書き換える。
 n(t) = rpm+ (rf - rp)N(t-1) - (rf/m) [N(t -1)]^2 
これは、α=rpm 、β=rf - rp 、γ=-rf/m と置くことで
 n(t) =α + β N(t-1) - γ [N(t -1)]^2
と表わされる。これは、観測できるn(t)とN(t-1)および[N(t -1)]^2 の線形式であるので
通常の最小二乗法(OLS)を用いて、(α,β,γ)を推定できる。
そして、この推定値を用いれば
 m= {-β ± SQRT(β^2 - 4αγ)}/(2γ)
 rp= α/m
 rf= - γm
-実績値と推定値の例
#ref(BassModel.JPG)

*BASSモデルの解 [#p1a18376]
既購入者数をxtとして、微分方程式で表現すると
 (dxt/dt)/(m-xt)=a+(b/m)xt
または
 dxt/dt=(m-xt)(p1-q1)xt
 ただし、p1=a,q1=b/m
である。
これを解くと 、一般解が得られる。
 xt=m{1-c0EXP[-(a+b)t]}/{(b/a)c0EXP[-(a+b)t] + 1}
ただし, 時点0での既購入者数は
 C0=(m-x0)/(m+(b/a)x0)
-初期時点の購入者を0とすれば、x0=0 であるので、c0=1と置いたモデルが標準モデルである。
-また、p1=0の場合は
  dxt/dt=q1(m-xt)xt
であるので、ロジスティックモデルを包含していると言える。
-dxt/dt=0となった時、xt=mとなり、潜在購入者に一致する。
-また、dxt/dtが最大となるのは
 Xt=m(b-a)/(2b)
の時である。
-ロジスティックモデルの一般式
 xt=a/{b+EXP(-ct)}
--ロジスティックモデルは、時間的に増加関数である。t-->大 でa/bに近づく。
-ロジスティックモデルによる実績値と推定値
#ref(logisticModel.JPG)
*モデルの拡張 [#cabb3c83]
-mが時点とともに変化するモデルあるいは価格の関数とする
- (dxt/dt)/(m-xt)=a+(b/m)xt の右辺を広告費などの商品に対する情報に関連する量の関数とする。
-企業間の競合を考えて、ロジスティックモデルのように、aやbを、他社との価格差や機能差を入れるモデル
-Bassモデルを適用したい新製品の販売局面はデータ数が少ないなど悪条件である。既存の類似販売実績から、最大需要を別途推定したり, 類似サービスのパラメータを用いたりして、精度を上げることが必要な場合も多いという。
*いくつかの課題 [#f82c25f6]
-販売初期段階では、パラメータmの潜在販売総量を推定してもその精度に信頼性が低いとされている。実際の潜在市場規模の大きさは、時間の経過とともに変化する方が自然。
-時間がたてば、潜在購買者の母集団である人口の増減や市場による製品の評価によって、潜在市場規模自体が変化する可能性がある。(非定常モデル)
--この問題の解決方法として、カルマンフィルタの適用が考えられ論文もある。
--また、「状態とパラメータの逐次決定」で記述した方法は、より厳密な推定方法である。
-「隠れマルコフモデル」との関連も興味深いテーマである。
*改善モデルの提案 [#c86696de]
Bassモデルでは、イノベータとイミテータの数を明示的に推定するモデルになっていない。そこで
次のように、改善する。
-状態量として、イノベータとイミテータそれぞれのt期の購入量np(t),nf(t)を定義する。
 Np(t)=np(t)+Np(t):イノベータの累積購入量
 Nf(t)=nf(t)+Nf(t):イミテータの累積購入量
 N(t)=Np(t)+Nf(t):過去の総販売量
-潜在市場は、mpとmfであり、mf+mp=m とする。
-イノベータは原モデルと同様に、自らの判断で非購入者は毎期定率で購入を行う。
 np(t)=rp(mp-Np(t-1))
-イミテータは、原モデルとは異なり、買いそうな人(潜在購入者)の何割が購入したかを考えて、その値に比例した一定割合で、非購入イミテータが購入すると仮定する。t-1期の潜在購入者の購入割合は、(m-N)/mであるので、これに非購入イミテータ数 mf-Nf(t-1) に定数rfを掛ける。
 nf(t)= rf(mf-Nf(t-1))(m-N(t-1))/m
-両式の合計が、t期の購入総数である。
 n(t)=np(t)+nf(t)
-このモデルは、局所的に可観測すなわち状態量np(t),nf(t)を観測値n(t),N(t)からそれぞれ推定可能であろうか?
*例題 [#v3d0240c]
下記の販売データが得られた4時点のデータ(第8四半期)までのデータを用いて、パラメータを推定し、その後のデータを予測してみよ。但し、下記の(p,q,N-)を予測。
#ref(Bass-estimationEQ.JPG)
--(答え)p=0.1 and q=0.41, and market potential (N–)=16,000 units .

#ref(Bass-example.JPG)
*推定の事例 [#hab9dfd5]
--参考:[[カラーテレビの需要予測>http://www.itbpo.jp/whitepaper/080804-1.html]]
#ref(BASS-TV.JPG) 
*参考 [#v9b2ba70]

-Bass(1969):[[A New Product Growth for Model Consumer Durables:PDFファイル>https://ccnet.stanford.edu/cgi-bin/course.cgi?cc=msande238&action=handout_download&handout_id=ID12120774612626]]
-[[Bassモデルの理論的考察.PDF>http://www.osaka-gu.ac.jp/php/fumihom/Kenkyu/Kyodo/oniki/noframe/jpn/lecture/gu-grad/ecinf/doctor/2005/chapter3.pdf]]
-[[KALMAN FILTER ESTIMATION OF NEW PRODUCT DIFFUSION MODELS.PDF>http://www.andrew.cmu.edu/user/sirbu/pubs/KalmanFilter.pdf.old]]
-[[A HIDDEN MARKOV MODEL OF CUSTOMER RELATIONSHIP DYNAMICS.pdf>http://www.chicagobooth.edu/research/workshops/marketing/archive/WorkshopPapers/netzer.pdf]]

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